#12 核・ミサイル問題解決のシナリオ

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魚谷事務総長の時事解説

#12 核・ミサイル問題解決のシナリオ

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UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔

1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。

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問題の解決にはどんな方法があるのか?

ハードランディング(軍事攻撃)とソフトランディング(北朝鮮の核保有容認)

北朝鮮による核・ミサイルによる脅威を取り除く方法は、ハードランディングとソフトランディングの2つに大別することができます。ハードランディングとは軍事攻撃を意味し、米国と北朝鮮が戦争状態になれば米国が勝利し、金正恩政権が崩壊することは確実です。しかし既に述べたように、戦争になれば周辺国が受ける被害を避けることはできず、韓国のみならず日本も巻き込まれる可能性があります。

一方、ソフトランディングとは北朝鮮が核保有国であることを認めて平和協定を結んでしまうというやり方です。これは北朝鮮が望んでいることであり、「ソフトランディング」と言えば聞こえが良いのですが、日本にとっては最悪のシナリオになる可能性があります。

今後起こり得る「ソフトランディング」の展開としては、北朝鮮が弾道ミサイルの大気圏再突入技術を完成させた後に、米国と「核凍結」でディールをする可能性が挙げられます。北朝鮮の核・ミサイル開発を断念させることができないと米国が判断した場合、どの線で妥協するかと言えば、米国本土まで届くICBMは実戦配備しないかわりに、韓国、日本、グアムまで攻撃できる核は今後も保有し続けるという線での「核凍結」で合意する可能性があるのです。

これにより北朝鮮が得る見返りは、経済制裁の解除、米韓軍事演習の中断、米朝平和条約の締結、在韓米軍の撤退などです。もしトランプ大統領の言う「アメリカ・ファースト」が、米国本土の安全を守ることが最優先だという意味なら、こうしたディールをやりかねないわけですが、日本と韓国は核の脅威にさらされたまま置き去りにされることになってしまいます。

もし北朝鮮が核保有国として認められたら、韓国で核武装論が起きることになります。既に世論調査では国民の6割が核武装に賛成という結果も出ています。韓国の核武装と言っても、米国は韓国が自前で核を持つことは絶対に許しません。そこで米国の核を韓国軍が共有する「核シェアリング」の議論になります。韓国が米国の核を共有すれば、それが抑止力となるため、北朝鮮の核は韓国に対して使えない兵器になります。

すると、取り残されるのは日本になってしまいますので、「日本は核シェアリングをしなくていいのか?」という議論になります。非核三原則の「持たず」「作らず」はそのままで、「持ち込ませず」を変えるという議論になりますが、日本は被爆国であり、核アレルギーがありますから、これはまさに国論を二分する大論争になるでしょう。

もし北朝鮮を「核保有国」として認めた場合、第1に、韓国、日本、さらに他の国々も危険な核兵器競争に参入する可能性が出てきます。第2に、北朝鮮から核兵器が中東諸国やISなどに拡散する恐れがあります。第3に、テロの記録を持つ孤立した国家が核兵器を持つ危険が出てきます。そしてなによりも、たとえ「ならずもの国家」であっても核兵器を保有すれば大国と対等な交渉ができるという前例を作ることになれば、国際的安定と世界秩序の脅威となることは明らかです。ですから、安易な「ソフトランディング」もすべきではありません。

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