#5 北朝鮮の存続が中国の国益

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魚谷事務総長の時事解説

#5 北朝鮮の存続が中国の国益

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UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔

1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。

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北朝鮮問題

なぜ中国は北朝鮮をかばうのか?

現状維持が中国の国益に最も適っているから

北朝鮮の問題に関する中国の立場は、今年8月10日付の「環球時報」社説に以下のように表明されています。

①北朝鮮に対する警告:もし北朝鮮が米国領を先制攻撃し、米国が報復として北朝鮮を武力攻撃した場合、中国は中立を保つ。(中朝軍事同盟は無視)

②米国に対する警告:もし米国が米韓同盟の下、北朝鮮を先制攻撃すれば、中国は絶対にそれを阻止する。中国は決してその結果描かれる「政治的版図」を座視しない。

③中国は朝鮮半島の核化には絶対に反対するが、しかし朝鮮半島で戦争が起きることにも同時に反対する。(米韓、朝)どちら側の武力的挑戦にも反対する。この立場において、中国はロシアとの協力を強化する。

要するに、中国は現状を維持したいのです。ここで中国と北朝鮮の歴史的関係を振り返ってみましょう。中国は、国家としては正式に朝鮮戦争に関わっていませんが、「中国人民志願軍」をおくり、17万人の死者を出しており、この時に毛沢東の長男も戦死しているわけですから、北朝鮮とは「血盟関係」にあると言えます。1961年には「中朝条約」を結び、北朝鮮が第三国から攻撃された場合には軍事的支援を行うことを中国は約束しています。中国と北朝鮮は、米国を自国の安全保障に対する最大の脅威だと考える点で一致しています。中国にとって北朝鮮は、資本主義社会との緩衝地帯としての役割を果たしているのです。

しかし、現在では中朝の「血盟関係」を意識する世代は引退してしまい、「中朝条約」の有効性に中国内で疑問の声も上がっています。中国の当面の国家目標は「小康社会(ある程度のゆとりのある社会)」の実現なので、北朝鮮の暴走によってかき乱されるのはまっぴらごめんだと思っているのです。ですから中国は北朝鮮の核開発には明確に反対してきたのですが、6カ国協議における中国の努力を繰り返しぶち壊してきたのが北朝鮮でした。一方、北朝鮮が突然崩壊して大量の脱北者が流れ込んできたり、中朝国境地帯の朝鮮族の民族意識を刺激することも避けたいと思っています。北朝鮮の貿易は対中国が90%であるため、中国が本気になれば北朝鮮に対する影響は大きいのですが、北朝鮮に対する国連の経済制裁の履行に消極的なのは、北朝鮮を追い込みたくないという中国の本音があるからです。中国が本気で経済制裁に取り組まないのは、「核を開発しても、北朝鮮が崩壊するよりはまし」「北朝鮮の存続は中国の国益にかなう」という判断からだと言われています。

また、中国が南シナ海で権益を拡大する一方で、北朝鮮の問題は米国とその同盟国の関心を中国からそらす上で有益です。北朝鮮問題を外交カードの一つとして使うことで、米国との交渉を有利に進めたいという思惑も中国にはあるのです。要するに中国にとって北朝鮮は、「厄介であると同時に必要な存在」なのです。

現実問題としては、中国東北地方と北朝鮮は深く結びついています。北朝鮮は中ロ国境に近い港湾都市・羅先を外資導入のための特区に指定しています。一方で中国の吉林省は海に面していないので、北朝鮮の港を使いたいという事情があります。北朝鮮にある無煙炭や亜鉛、鉄鉱石の鉱山開発権を中国企業が取得し、中国に輸出する事業も増えています。中国東北地方と北朝鮮は経済的な一体圏を形成しているため、北京政府の指示にも従わないという問題もあるのです。

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