#8 記紀の神話②「黄泉の国の訪問」
いまさら聞けない「神道の基礎知識」
#8 記紀の神話②「黄泉の国の訪問」
- UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔
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1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。
\ contents /いまさら聞けないシリーズ
先回から記紀に記された主な神話の紹介を始めました。「日本列島の誕生」に続いて、今回は「黄泉の国の訪問」を紹介します。
火の神様「迦具土(かぐつち)」の出産によって大火傷をしながらも、たくさんの神様を産み続けた伊邪那美命(いざなみのみこと)の体は、どんどん弱っていきます。伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は一生懸命に伊邪那美命を看病しましたが、遂に伊邪那美命は亡くなってしまったのです。「愛するお前の命を、一人の子の命と引き換えにしてしまった」。嘆き悲しんだ伊邪那岐命は、伊邪那美命の体に寄り添い、涙を流して泣きました。伊邪那岐命は悲しみのあまり、伊邪那美命を焼死させてしまった迦具土を切り殺してしまいました。
愛する妻である伊邪那美命を失ってしまった伊邪那岐命は、悲しみに暮れます。しかし、我慢できなくなった伊邪那岐命は、地の底にある死者の国である黄泉国(よみのくに)へと伊邪那美命を迎えに行こうと考えました。地の深い深い底にある黄泉国へとたどり着いた伊邪那岐命は、扉の奥にいる伊邪那美命に向かって、一緒に地上に帰ってきてくれるように優しく呼びかけました。「愛する妻よ、私とお前の国造りはまだ終わっていない。どうか、一緒に地上に帰っておくれ」。
しかし、中から聞こえてきたのは伊邪那岐命の悲しそうな声でした。「どうしてもっと早く来てくれなかったのですか。私は既に黄泉国の食べ物を食べてしまい、地上へは戻れないのです。でも、愛するあなたのために、地上に帰っても良いかどうか、黄泉国の神様に尋ねてみます。それまで待っていてください」。
伊邪那美命の言葉を聞いて、伊邪那岐命はじっと待ち続けました。しかし、いくら待っても伊邪那美命からの返事はありません。待ちくたびれてしまった伊邪那岐命は、櫛を折って火をともし、黄泉国へと伊邪那美命を探しに行くのです。扉の奥は真っ暗な闇が続いていました。そこで伊邪那岐命の目に飛び込んできたのは、恐ろしい鬼たちが取り付いた伊邪那美命でした。
「待っていてと言ったのに。あなたは私に恥をかかせましたね」。醜く変貌してしまった自分の姿をみられた伊邪那美命は、神の毛を逆立てて激しく怒りました。「伊邪那岐様を捕まえなさい!」すると、鬼たちは一斉に伊邪那岐命を捕えようと追いかけてきました。伊邪那岐命は地上に向かって必死になって逃げて行きました。