#9 記紀の神話③「三貴子の誕生」
いまさら聞けない「神道の基礎知識」
#9 記紀の神話③「三貴子の誕生」
- UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔
-
1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。
\ contents /いまさら聞けないシリーズ
先々回から、記紀に記された主な神話の紹介を始めました。先回の「黄泉の国の訪問」に続いて、今回は「三貴子の誕生」までを紹介します。
亡くなった伊邪那美命(いざなみのみこと)を迎えに行くために、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は黄泉国(よみのくに)に出かけて行きますが、そこで見たのは醜く変貌してしまった伊邪那美命の姿でした。怒った伊邪那美命は、鬼たちに命じて伊邪那岐命を捕えようしました。凄まじい勢いで迫ってくる鬼たちに、伊邪那岐命は櫛や髪飾りを投げつけしました。すると、櫛や髪飾りは筍や野葡萄に変化し、鬼たちはその実を食べ始めたのです。そして、黄泉の国の入口までたどり着いた伊邪那岐命は、そこにあった桃の木から桃を3つ取り、投げつけてやると、鬼たちはみな逃げて行きました。そのすきに伊邪那岐命はなんとか逃げ切ることができたのです。
恐れた伊邪那岐命は、大きな岩で地上と黄泉国の出入り口を塞いでしまいます。岩の向こう側から、伊邪那美命の声が聞こえてきました。「これからは、あなたの国の人間を毎日1000人ずつ殺します」。すると伊邪那岐命は、「それならば、地上では毎日1500人ずつ子供が生まれるようにする」と答えました。
伊邪那岐命は、「最後は喧嘩別れになってしまったけれど、振り返ってみると、国を造り、様々な神様を産むことができたのも、あなたがいたからです」と静かに言いました。すると伊邪那美命は、「私もあなたと一緒に国を造り、神様を産むことができて、本当に幸せでした」と答えたのです。そして「ありがとう」と言葉を交わし、伊邪那岐命と伊邪那美命はお別れをしました。
黄泉国から戻った伊邪那岐命は、黄泉国の汚れを落とすために、川で体を洗い、海で禊をしました。すると、左の目を洗ったときに、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が生まれ、右の目からは月読命(つくよみのみこと)、そして鼻を洗ったときに須佐之男命(すさのおのみこと)が生まれました。
伊邪那岐命は天照大御神に「国を栄えさせ、人々を幸せにするように」と伝え、着けていた首飾りを渡し、安心してすべてを任せることにしました。そして伊邪那岐命は最初に作った立派な島、淡路島の多賀の地でお休みになることにしたのです。これが、日本の国の始まりに関する物語です。