いまさら聞けない「神道の基礎知識」

いまさら聞けない「神道の基礎知識」 第20回

八幡神と仏家神道

text by 魚谷俊輔


日本の神社にはさまざまな神様が祀られていますが、最も多くの神社に祀られている神様は八幡神です。神社数の多い祭神ランキングは、以下のようになっています。

 八幡神 7817
 天照大御神 4425
 天神・天満 3953
 稲荷 2970
 熊野 2693

このように神社数トップの八幡神なのですが、実は神道の神様としては八幡神は不思議な神様なのです。八幡神は、神典の中でも「記紀二典」としてとりわけ重視されている『古事記』と『日本書紀』のなかに全く登場しないのです。中心的な経典に登場しない神様でありながら、最高神とされている天照大御神をはるかに上回り、神社数トップというのはそれだけで不思議なことです。

八幡神は、日本に土着の神ではなく、渡来系の神であると言われています。新羅の国の神を祀っていた渡来人が、宇佐に八幡神を祀るようになったという説が有力です。そして聖武天皇が奈良に大仏を建立するとき、巫女を通して「私が大仏建立を完成させる」という託宣を下したのもまた八幡神です。大仏建立という国家的事業を支える役割を八幡神が果たしという話なのですが、要するに神道の神でありながら、仏教による国家づくりの中心的な役割を果たしたということなのです。

その意味で、八幡神は神仏習合の象徴的な神様であると言えます。8世紀末から「八幡大菩薩」と呼ばれるようになり、神道の神であると同時に仏教の菩薩の役割を果たすようになりました。そして武家が台頭すると、「武神」として崇められるようになりました。

神仏習合により、さまざまな仏教伝統と神道が融合することになりますが、これらを「仏家神道」と呼びます。代表的な仏家神道を挙げると以下のようになります。

①両部神道(真言宗):真言密教の教理から神道を説明
「両部」とは「金剛界」と「胎蔵界」を指します。伊勢神宮の内宮・外宮の祭神は大日如来と同一であると解釈しました。

②山王神道(天台宗):比叡山延暦寺の鎮守である日吉大社で形成
祭神である大己貴神、大山咋神、田心姫神の本地仏はそれぞれ、釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来であるとされました。

③法華神道(日蓮宗):天照大御神と八幡大菩薩を曼陀羅の中に勧請
神々は仏法を擁護するものと解釈され、「法華三十番神」という信仰を生み出しました。これは30柱の神々が一か月の間、毎日交代で「法華経」を守護するという思想です。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

八幡神と仏家神道

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